今回は保護者の方からご質問をいただいたので、
ここでみなさんとシェアします。
きっと
「ちょうど知りたいと思っていたところだった!」
というかたもおられることと思います(^_^)
本題に入る前にお伝えしておきたいのは、
どの事項についても、
「これは正解」
「これはダメ」
と正解と不正解に分けられるものではないということです。
園で大事にしていることは、
すなわち 0 才〜7 歳までのこどもたちに大事なことです。
乳幼児期のこどもたちは、
ふんわりした、夢のような世界にいます。
現実的な、
はっきりくっきりした形や音、色、ことば
等は幼いこどもたちには適さないものである
ということを念頭に置いておいてもらえればいいかと思います。
それを押さえておけば、
日常的に何か迷うことがあっても、
大きく外れることはないはずです。
今回は高輪幼稚園部スタッフがご質問にお答えしています。
シュタイナー教育としての基本は同じでも、
他のシュタイナー園では違うやり方の場合もあります。
先生の考え方や、
その時のこどもたちの状態によってもやり方が異なってきます。
なので、
実践例は数あるうちの一つととらえてください。
はじめに
<園で大事にしていること>
生まれたばかりの赤ちゃんは
はっきりした自分意識はなく、
まだ眠っているような意識で
まわりの世界の中に同化しています。
幼ければ幼いほど、
周囲の環境を、
呼吸する様にそのまま自分の中に取り込んでいきます。
子どもがその成⻑発達のプロセスを、
自分のペースで、
自分の持つ生きる意志でたどっていけるよう、
それが自然にできる環境を作っていく事を、
園ではとても大事にしています。
Q1)黑がいらない理由
T シャツは黑なしがいいとか、
蜜蝋クレヨンの黑という色を抜くという話を聞いたことがあって、
黑ってどういう意味があるのかな?
というのを教えてもらえたらと思いました。
↓
基本的には“幼児期に相応しい環境“
という視点ですべてを考えています。
髪の毛や土は一見黑にみえますが、
よくみてみると赤みがかっていたり、
焦茶だったりします。
自然界には完全な黑はありません。
乳幼児期の子どもたちに相応しい色は、
ふんわりと包んでくれるような淡い色です。
色でいう黑は、例えば、
味覚でいう苦味や酸味と似た位置付けです。
苦い食べものや酸っぱいものを最初に口に入れた子どもはどんな反応をみせますか?
おそらくぺっと吐きだすでしょう。
幼い子どもたちはそれらを
本能的に“毒“や“危険な物“と認知する能力があるのです。
それと同じように、
黑は闇の色として空洞を感じさせ、
子どもにとっては不安を煽るものです。
一方、
優しい色は子どもに安心感を与えます。
子どもたちはこの世にきたばかりで、
まずはこの世界で安心して過ごせることを実感しなくては次のステップには進めません。
毎日同じリズムの繰り返し、
リズムを整えることも結局はここに繋がります。
そして、
十分にそれを確認できた 10 才前後で黑を扱えるようになります。
「乳幼児期には」まだ必要のない色、ということですね。
蜜蝋クレヨンの黑を抜くというお話も
必要になるまで子どもの前に置かないという意味ではないでしょうか。
Q2)
一学年ずつ、色が増えていく理由
(水彩だけ?それともクレヨンも?)
↓
幼稚園部で毎週火曜日の活動
としての水彩画においては、
赤、⻩、⻘の三原色を使用します。
このときの水彩画では
「色の体験、色を味わう」ことを大切にしています。
濡れた画用紙に絵の具をのせると、
まるで生きているかのように色が動き出します。
⻩色は光り輝き、
赤は元気に飛び跳ね、
⻘は周囲から迫る闇。
一見大人しい⻘は⻩色と出会うと草原のように広がります。
このように、
赤、⻩、⻘にはそれぞれの性質があり、
色が出会い、混じると新しい色がうみだされます。
子どもたちはそれを体験することによって、
色の動きをを心で感じとり、
心が動くのです。
そのため、
年少ではまず一色ずつの色と出合っていき、
年中になると二色の色と出合います。
そして
年⻑では三色の豊かな色彩の世界に入っていきます。
三原色が揃うと、
濃さや色の割合の組み合わせによって
自然界にあるほとんどすべての色が生み出されます。
Q3)
蜜蝋クレヨンを使う理由
↓
身体に触れるものとして、
蜜蝋からできているので、
仮に口に入れてしまったとしても安全なものであるからです。
Q4)
角が丸くなっている画用紙の理由
角があるのは好ましくないですか?
↓
幼児期の子どもの環境として、
直線的なものよりも、
丸みを帯びた曲線のほうが優しくふさわしいからです。
石や木などの自然界にあるものは、
曲線で成り立っています。
ただし、
角を必ず落とさないといけないということでもありません。
Q5)
シュタイナー教育の音楽に
”ド”と”ラ”がない理由
↓
ラは、赤ちゃんがこの世にうまれたときの産声と同じ音で、
幼児期にはとても相応しい音です。
なので省かれている音はドとラではなく、
ドとファです。
乳幼児期にはドとファを除いた、
レミソラシからなる五度の音階(ペンタトニック)
がとてもよく合っています。
幼い子どもは大人に比べて、
生まれる前にいた霊的な世界から離れてまだ時間が経っていないため、
ペンタトニックの音色が身近に感じられるためです。
そのため、この世的な全音階を与える前に
十分にペンタトニックを体験させてあげます。
五度のたゆたうような響きは、
子どもの本質そのものをあらわしており、
その響きはとても安心感があります。
(高輪幼稚園部 根本真秀子)
上記は、
0〜7 歳の間のこどもたち(第 1 七年期)
にふさわしいものとしての考え方です。
その先の段階では
またそれにふさわしい整え方があります。
こどもと大人は、
同じ人間とは言え全く別のものです。
大人になったら飲むからといって、
こどもの間にお酒を与えたりしませんよね。
感覚器官が育った後に与えるのと、
いま育とうとしているところに与えるのとでは全然違う。
それはお酒だけのことではなく、
食事の内容や、
生活時間、
人混みに出かけること、
刺激的な音楽、
・・
全てにおいて同じです。
こどもの起きている時間は、
こどものために整えてあげる。
こどもが寝た後は大人だけの時間として、
好きなものを食べたり飲んだり、
映画を見たり、
楽しみの時間をお過ごしいただけたらと思います。
そのためにも
早寝はとてもいい習慣です(^_^)