最近、『庭仕事の神髄』(スー・スチュアート・スミス著)という本を読み進めています。まだ四分の一ほどですが、すでに心に残る言葉がいくつもありました。その中の一つをご紹介します。
著者は、イギリスの小児科医で精神分析家のドナルド・ウィニコットの理論を引用しています。
ウィニコットが語る「ほどほどの母親」とは、子どもが幻想(fantasy=空想的で守られた世界)をちょうどよく大切にできるように支える存在です。彼はこう述べています。
「母親の最終的な役割は、幼児をゆっくりと幻滅させることだ。しかし、たっぷりと幻想を持たせる機会を与えていない限り、母親に成功の望みはない。」
ウィニコットはこのプロセスを「促進(facilitating)」と呼びました。それは、評価を急がず、何者かになれとプレッシャーをかけることなく、子どもが自分自身へと自然に成長していくための環境づくりです。
彼によれば、幻想を十分に体験していない子どもは、幻滅を強く感じすぎてしまい、勇気を失ったり、絶望したりしやすくなるそうです。幻想の体験は、やがて現実の厳しさに立ち向かうための心の力を育てる——つまり、自己信頼と希望の土台になるのです。
この考え方は、シュタイナー教育とも深く共通しています。幼児期の子どもが「夢のような世界」に安心して生きていられることが、将来のしなやかな力を育むと考えます。そして、7年ほどの時間をかけて、ゆっくりと現実の世界へ導いていく。この流れがとても大切なのです。
ところが、現代では幼い子どもの集まる場所でも、現実主義的な教育環境が主流になっています。けれども、子育てや人間づくりは多数決で決まるものではありません。流行に左右されず、目の前の子どもをよく見て、その子に合ったペースで育てていくことが大切です。
教育法やメソッドはたくさんありますが、最終的に子どもの人生に責任を持てるのは親と本人だけです。だからこそ、周りの意見に流されず、親として、夫婦として、自分たちの考えを確かめながら進んでいくことが何より大事なのだと思います。
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